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インタビュー・カンボジアで出会った日本人(4)

今日のカンボジアで出会った日本人は大西章弘さんです。

彼は2013年3月に首都プノンペンの最も勢いのある高級エリア・ボンケンコンにcafeをオープンさせました。

『こっち来るまでは山に8年間籠って、ヒッピーみたいなことしてたんですよね。』

国内の主要なアルプスと呼ばれる山はほぼ踏破する程に、もともと登山などアウトドアが趣味だった大西さんは、ある時に林業を営むおじいさんに出会います。

もともと『林業=樹を切るのを仕事にしている』とあまり良いイメージを持っていなかった彼にとって、そのおじいさんから聞く言葉は衝撃的でした。

戦後の焼け野原、当時の日本政府の政策で、建築ラッシュを見据えてスギ・ヒノキの植林が推奨され、補助金も用意されました。

しかし、蓋を開けてみると、日本に材木を乾燥させる技術が整っておらず、外国からの輸入に頼るようになり、国内市場の需要はなくなりました。

補助金を目的に植林を行った多くの人々と、彼らを主導した戦後の政策によって、日本の森林には生態系に割り込むかのように植林されたスギ・ヒノキが多く残されたのです。

畑の間引きのように、山にも間伐調整(木々の密度を調整する木の間引き)が必要なのですが、国内需要がなくなっているスギ・ヒノキにわざわざお金を掛けて、調整間伐をする余裕もなく、放置され、山は荒廃の道をたどります。

野生動物が村に下りてきて、人に迷惑を掛けたり、畑を荒らすのも人間が生態系を変えようと植林をし、そのまま放置をした結果だそうです。

人間が引き起こした山の荒廃を防ぐために、木々を切って、調整間伐を行う林業という仕事。

自分が大好きな自然のために出来る仕事。

その話を聞いて、大西さんが林業を始めるのに時間は掛かりませんでした。

 

『やりがいのある仕事でした。週末はキャンプに、カヤックにと大好きな自然に囲まれて、本当に充実した最高の毎日でしたよ。』

彼が山で暮らした日々を思い出しすとき、本当に嬉しそうな顔をして話してくれます。

しかし、2011年3月に東日本大震災で状況は一変します。

震災の影響を大きく受け、仕事量は激減するのです。

そんな時にカンボジアで農村開発に関わっている旧友からの連絡があり、カンボジア政府が舵を取り、2015年までにお米の輸出量100万トンを目指すライスポリシーの話なども聞き、商機を感じた彼はカンボジアに渡り、農村開発に関わることになります。

『やっぱり山の仕事も、山での生活も大好きだったんですけど、家族のためにもお金を稼がないといけなかったんでカンボジアに来るのを決めました。』

その仕事で見たカンボジアの農村の現場に大西さんは驚きます。

精米機を持たない貧しいカンボジアの農家では、ベトナムの業者に高いお金で不安種のモミ種などを売り付けられ、安いお金で買い叩かれている状況でした。

『本当に彼らの状況ってひどいですよ。この状況を改善するための仕事も林業と同じくらいやりがいがありましたね。』

精米機を一人の農家で買うことが不可能でも、コミュニティで購入して、みんなで共有することを提案しようとするも、この国を襲ったポル・ポトの悲劇により、他人を簡単に信頼出来ない彼らにとって、それは受け入れられないものでした。

ほぼ寄付という形で提供したりと、様々な方法を試行錯誤するも、なかなか結果が出ずに、1年が経ちます。

環境問題に関心が強い大西さんにとって、この農村の状況を改善するための農村開発の仕事は非常にやりがいのあるものでしたが、カンボジアに来た理由を思い出した時に、日本に残した家族のためにも、自分でビジネスを行うことを決めます。

『決して諦めた訳じゃなくて、この問題は自分にとって何とかしたい問題だから、まずは自分の城を持って、基盤をしっかりさせてから。そこで態勢を立て直そうと思いまして。』

そう言って、彼がカンボジアの首都プノンペンに築いた城は、『RENATURE』という名の、熱帯魚、水草を観賞・購入出来るcafeです。

熱帯魚は簡単に飼育出来るグッピーから富の象徴とも言われるアロワナまで多くの魚が水槽の中に飼育され、生きた水草がそれらを彩ります。

日本では生きた水草は当たり前の光景ですが、ここカンボジアでは熱帯魚の水槽にはビニールの水草が使われ、店を訪れたカンボジア人にまず尋ねられるのが、『これは偽物ですか?』ということだそうです。

日本と比べて、水質に圧倒的な差があるカンボジアでは生きた水草を維持することは手間もコストも大きくなりますが、彼は徹底的にこだわりました。

『プノンペンって本当に自分が生活していた山での生活と全く違って、都会の喧騒が激しくて、そんなところで、自分が好きな自然の癒しを提供したいなって思いがあったんですよ。』

店内の内装にもふんだんに木を多く使い、店内の雰囲気にマッチしたヒーリング音楽を流す。

 

『地殻変動とか気候変動が至る所で起きてますけど、高度経済成長で自然をないがしろにしてきたツケが今になって回ってきてると思うんですよ。

「RENATURE」という店名も「自然に帰ろうよ」っていう僕のメッセージを込めました。』

彼は水槽内でのエビや魚の繁殖にも挑戦しており、学校で魚を飼育できるほど教育カリキュラムが充実していないカンボジアの子供にとっては、初めて見る光景で、とても喜ばれるそうです。

 

『自然って単純に見てきれいって思えますもんね。そんな光景を見てるとこのcafeをオープンさせてよかったって心から思いますよ。』

私が大西さんのお話を聞いていて、一番印象的だったのが、やはり自然への情熱的な思いでした。

そして彼の口から聞かされる、きこりをしていた頃の郡上八幡での自然と共存していた美しい日々。

RENATUREにいると都会の喧騒を忘れさせてくれる癒しの時間を感じます。

実は私もプノンペンに滞在している時には、ほぼ毎日ここで朝の珈琲を頂いている程にお気に入りのスポットです。

センスの良いヒーリング音楽をBGMに珈琲を飲みながら、もしかすると大西さんは自分がかつて山で過ごしていた自然との美しい思い出を、ここプノンペンの一画にスモールワールドで再現しようとしているんじゃないかと感じました。

  

そんな彼の世界観がぎっしり詰まったcafeはこちら。店内に展示されている熱帯魚、水草は購入することも出来ます。

オーナーの大西さんは非常にきさくな方で、森林問題や環境問題にも造詣が深いので、色々なお話も聞けます。

プノンペンの喧騒に疲れたときには、是非一度足を運んでみてはいかがでしょう。写真右はアロワナがいるVIP room(チャージ2$)、お茶会などで人気が高いので要予約。

Address;Street 288 Around Street 63, Phnom Penh095930313, Cambodia

Tel;095930313

こちらのFacebookページで店内に展示されている水草や熱帯魚の写真などもリアルタイムで確認出来ます。

インタビュー・文:大崎 章弘

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