カンボジアの伝統格闘技・ボッカタオ
アンコール軍の強さの源といわれた武術。一度は途絶え、一人の男の手で復興した誇りの物語。

ボッカタオ(BOKATOR)は、「激しく叩く」を意味するボックと、「ライオン」を意味するタオから成り、「ライオンを激しく叩く」の意。約2000年前、村を襲ったライオンを膝の技で倒した武人の伝説に由来するとされます。
アンコール・ワット建造のころから伝わる武術で、かつてはアンコール王国の軍隊で用いられました。12世紀末にはジャヤヴァルマン7世が奨励し、アンコール・ワットの壁画にもその技が数多く描かれています。素手や槍が中心の軍でも、接近戦では熟練の使い手により最強を誇ったといわれます。
この失われかけた武術の復興に挑んだのが、サン・キムサン氏。ポル・ポト時代にタイへ亡命し、その後アメリカで武術の師範として暮らしていましたが、弱ったカンボジアを見かねて2001年に帰国。師範を集めて組織を整え、2005年に忘れられていた武術を「ボッカタオ」と名づけました。当初は虐殺の記憶から誰もが関わりを恐れ、「そんな格闘技は知らない」と断られ続けたといいます。草の根の活動を続けた結果、いまではテレビCMになるほど広く知られる存在に。ボッカタオは、カンボジアの人々にとって格闘技以上の、クメール民族の誇りなのかもしれません。


